マイノリティ・センス

自閉スペクトラム症の個人的な表現・分析(聴覚過敏多め)

スイレン

ドナ・ウィリアムズ『自閉症という体験』との対話 2 詩「鍵を知る者」

【鍵を知る者】

   ―ドナ・ウィリアムズに贈る―

 

 

鍵を知る者よ 教えてほしい

わたしがなぜここに 繋ぎ止められているのか

母なる器

痩せ果てた大地の封印に

縛(いまし)めを解(ほど)く 型はどこに

秘匿されているのか

 

  ――組み敷かれた魔方陣

  ――解けない鍵穴

 

ふたつでひとつのからくり

片割れを抱えている あの雲に

差し伸べる大地の稲穂が

なぜ届かないのか

わたしはひとりで

硬い土に水をやり

稲穂を鍵の凹凸に変えようとする

けれども鍵は ふたつでひとつ

雲は 持ち去ったまま

 

鍵を知る者よ

あなたはあなたの頭上へ

あなたの長身よりも遙かに

振り解(ほど)いていった

縛めを解く 型となって

母なる器はあなたを飲み尽くしたあと

久遠の沈黙にばら撒いて

ふたつでひとつのからくりを

無数に降り注いだ

 

  ――蒼穹の歌声

  ――粒子の遠来

 

鍵を知る者よ 教えてほしい

痩せ果てた大地を 脱ぎ捨てる

鍵の あなたの

遍(あまね)く在処(ありか)を

 

  *  *  *

 

この作品は、コミュニケーションできない悲しみを、ドナに語りかけて書いた詩です。

自閉症という体験』を読んだあとに思い浮かびました。