マイノリティ・センス

自閉スペクトラム症の個人的な表現・分析(聴覚過敏多め)

スイレン

2019-10-28から1日間の記事一覧

〈定位〉から考える聴覚過敏6 音を受け止めてレシーブする選択的注意

なぜ聴覚過敏になるのでしょうか。 過敏に影響を及ぼすものは、「調整」「気分」「音の意味」という3つの要素がからんでいると、さきに引用した著者は述べています1)。思い当たる体験から、詳しく描写してみたいと思います。 まずは「調整(あるいは調節…

〈定位〉から考える聴覚過敏5 中枢利得と内圧

人の聴覚には利得を調整する能力があるとデービッド・M・バグリー/ゲルハルト・アンダーソンは述べています。 利得とは、「中枢(神経)で増幅されて聴覚利得(auditory gain)が加わり、内部で意識される音の大きさが大きく感じられることを意味する。た…

〈定位〉から考える聴覚過敏4 聴覚の〈定位〉

視覚と触覚は、聴覚の<定位>を構築する強力な助っ人です。けれども視覚単独では、視界に映じる物体表面の奥に関係の網を張っている、現実世界の「気配」までを把握するのはむずかしいです。また、触覚単独で空間の実在を捕捉することはできても、「気配」…

〈定位〉から考える聴覚過敏3 〈定位〉の発見(2) スルリとはまり、なじむ

これは、ある日の<定位>の成功体験です。 そのころ私はひどい聴覚過敏で、静かな室内でも超音波はピリピリとがっているし、一歩外に出れば「音の壁」がジワジワ身体を締めつけ侵襲してきて、音圧そのものと化した空間が、十方から迫ってくるようでした。 …

〈定位〉から考える聴覚過敏2 〈定位〉の発見(1) この世界と私の身体の接地点

聴覚過敏について解説された本1)を読んでいて、重要なキーワードになりうると思ったのが<定位>という概念でした。最初は訳(翻訳書だった)が悪いと思って、もっとわかる日本語に訳してほしいと文句を言っていたのですが、ふだんあまり聞かないこの言葉…

〈定位〉から考える聴覚過敏1 はじめに

聴覚過敏は、たいていの人が意識せずにやり過ごせる音を、ときには我慢ならない苦痛をともなう過剰な刺激として受けとる体験です。 聴覚過敏が発生し、その症状が変化するしくみは複雑で、全容を把握するのはたやすくありません。特定できる一つの原因がコウ…

SNS不安 (7)まとめ 直接的で粗暴なつながり

私のSNS不安は、広場恐怖、社交不安、緘黙に近いと自覚している。最も恐れているのは、「直接的で粗暴なつながり」である。 図4は、これまで述べてきたSNS不安の全体像を描いたものだ。 図4 SNS不安 SNSのネットワークには、すでに述べたよう…

SNS不安 (6)雪崩(なだ)れ込む〈思念〉と〈感情〉

発信者の細部を捉えると、「上空飛行」のときはノイズだったそのツイートに、「あ、そうなのか」「へーぇ」「面白い」「すごい」「きれい」などと私のハートが立ち上がる。つまり共感して、いいねを押したくなることもある。しかし、この動機は挫かれること…

SNS不安 (5)ツイートから「人の見え方」を観察する

ツイートの一つひとつを確認するために、エイッと気力を振り絞って、タイムラインを鳥瞰している意識の上空から「低空飛行」させることにする。 高度を落とすと、離れ家に、友人という建前のよく知らない人が押しかけて、主人不在のホームパーティーをしてい…

SNS不安 (4)タイムラインはノイズの大海

タイムラインを「鳥瞰」すると、視界を覆っているのは、取得したい情報ではないノイズが多い。 まず、おすすめユーザーとか、「眠い」「○○したい」などのドウデモイイつぶやきとか、目をチカチカさせる広告は、煩わしいノイズだ。 不特定多数の人に共感を求…

SNS不安 (3)思いきってタイムラインへ……

そんな「通知」の赤丸が浴びせかける、能面のように不気味な情念ビームを押し切って、ついにツイッターのアイコンをタッチする。Now loadingの画面に切り替わり、目の前に飛び込んでくるのは……。 ツイート、ツイート、ツイートの嵐。投稿者のプロフィール画…

SNS不安 (2)通知にウッ!

「ツイッターがやりづらい私」のイメージを、ことばと図で描写してみよう。 まず、スマホ画面にあるツイッターのアイコンの右肩に、何かが表示されている。バッジのような赤い丸印の中に、白抜きで数字が見える。これは、いいねされた、リツイートされた、メ…

SNS不安 (1)ツイッターができない

私はツイッターができない。フェイスブックも、LINEも、インスタグラムも。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)と称される、参加者同士のコミュニケーションを主目的にしたWEBサービスが苦手だ。ふだんから絵を描いたり文章を書いたりしている…

『踏まないで!』第11章 ブラックホールの秘密

※この記事は、現在執筆中の聴覚過敏手記『踏まないで!』の一部分です。 第11章(600頁分)のうち、最後の章です。 1 厳しかった猛暑は和らぎ、朝晩の涼しさはいよいよ増して、秋の気配が濃厚になってきた。真夏のころ散歩道でぶつかってきたセミは姿を消し…

『踏まないで!』第11章 味方を求めて

※この記事は、現在執筆中の聴覚過敏手記『踏まないで!』の一部分です。 第11章(600頁分)のうち、最後の章です。 1 まだ梅雨は明けていなかったが、一時、雨はやみ、梅雨闇と呼ばれる薄暗い曇り空が視界を覆っていた。二〇一九年七月上旬のある日、一年ぶ…

『踏まないで!』第11章(1) 高木さんとの対話

※この記事は、現在執筆中の聴覚過敏手記『踏まないで!』の一部分です。 第11章(600頁分)のうち、最後の章です。 詩ブログ 地底の声 にも投稿しました。 1 梅雨の季節真っ最中で、雨が降り続き、蒸し暑い空気が肌にまとわりついていた。二〇××年六月末日…