マイノリティ・センス

自閉スペクトラム症の個人的な表現・分析(聴覚過敏多め)

スイレン

2021-09-26から1日間の記事一覧

〈自閉〉と〈社会〉のはざまで(15) 高校時代3 ファンタジーの終焉

大晦日の深夜。親戚の家に一人でいた。 あるアニメ映画が放映されていた。いよいよエンドロールが流れ、「物語の終わり」が訪れようとしていた。 それは、死を予感させた。胸を締めつける恐怖が、心に爆発した。 むきだしの存在不安、そして死の不安。 梶井…

〈自閉〉と〈社会〉のはざまで(14) 高校時代2 発狂

◆発狂 十二月三十一日。私は突然「発狂」した。 それはいかにも奇妙で、異様な体験だった。私の心に何が起こったかを、一般の人に説明するのは難しい。 〈世界〉が見えるようなった私は、「物語」に耽溺した。小説、漫画、アニメ、ゲーム、映画のファンタジ…

〈自閉〉と〈社会〉のはざまで(13) 高校時代1

◆うわの空の高校生活 変わり者が多く、個性が尊重される美術系の高校だったせいか、〝浮く〟 ことはなかった。 高校生活もやはり、「うわの空」だった。 美術や漫画つながりの友達はいたが、趣味は合っても、ほんとうの親密さや、心のつながりは、感じなかっ…

〈自閉〉と〈社会〉のはざまで(12) 中学時代6 ファンタジーへの没頭

◆趣味の世界に没頭する 小学校高学年から絵を描くようになっていた私は、アートを皮切りに、小説、漫画、アニメ、ゲーム、音楽などの「趣味の世界」に熱中するようになった。それは尋常でない没頭ぶりだった。やりすぎるし、やめられないのだ。 アウトドア派…

〈自閉〉と〈社会〉のはざまで(11) 中学時代5 宇宙人

◆宇宙人 自分はほんとうに人間なのだろうか? 宇宙人ではないだろうか? 己の「人間」を疑った。 毎日、学校から帰ると、押し入れの中に潜り込み、襖を閉めて、暗闇で一、二時間は泣いた。毎日毎日。 思い返せば、私の発達はうんと遅れていた。小学時代は多…

〈自閉〉と〈社会〉のはざまで(10) 中学時代4 人間への違和感

◆人間への違和感 ほとんど同じ時期、もう一つの、鮮烈な自己意識が芽生えた。 毎日、中学校の校舎で、楽しげに笑う中学生の群れを見ていた。私の眼は、虚ろだった。 強烈な違和感があった。 みんながなぜ笑っているのかわからない。みんなと同じように感じな…

〈自閉〉と〈社会〉のはざまで(9) 中学時代3 〈世界〉

ある夕方、空いた電車に乗っていた。車窓の外で霧雨が降っている。夕靄が縦座席を染める。 突然、私の脳裏に見たこともない映像が鮮やかに出現した。薔薇の蔓が絡まり合った巨大な門が、白く霞む濃霧に浮かんでいる――。 白昼夢。 それは、心の宇宙に膨張する…

〈自閉〉と〈社会〉のはざまで(8) 中学時代2 詩「大いなるものへ」

◆自我の芽生え 突然、何かが私を激しく打った。天の啓示のようないかづちが――。 【大いなるものへ】 灰に染まる石室で、あなたは〈わたし〉を与えてくれた 日覆いの隙間から、見知らぬ風景の空から それは突然降りてきた 初めて目覚めた人間のように 啓示は…

〈自閉〉と〈社会〉のはざまで(7) 中学時代1 故郷喪失

◆引っ越し 小学校を卒業すると同時に、父の仕事の都合で、中部地方のある町に引っ越した。社宅アパートに住まった。 この町は、工場地帯だった。 石灰石の鉱山がある。ふもとの工場が採掘し、破砕し、焼成する。見渡す限り、そのような工場だらけだ。 工場の…

〈自閉〉と〈社会〉のはざまで(6) 小学時代5 集団意識ゼロ

◆疎い人間関係 よくからかわれ、いじめられていた。 男の子に背中で担がれて泣き喚いた。五線譜に作曲したノートを奪われた。ペンを盗られた。 しかし当時は、相手が自分に何をしているのか、わからなかった。意味不明な災難に遭ったという感じだけがあった…

〈自閉〉と〈社会〉のはざまで(5) 小学時代4 人目がわからない

◆人目がわからない 家でも外でも、狂ったように遊び回るのに、人が来るのを待っているだけで、自分から、友達の輪に入ろうとしなかった。 保育園の先生によると、自分の殻に閉じこもって、外の世界に興味を示さなかったという。 母によると、「暗い」という…