マイノリティ・センス

自閉スペクトラム症の個人的な表現・分析(聴覚過敏多め)

スイレン

小説「開通―コミュニケーションの封鎖が解かれるまで―」

開通―コミュニケーションの封鎖が解かれるまで― 5まとめ 〈アンテナ〉と〈チューニング〉

私のinput回路は、チューナー(受信機で同調操作を行う部分)を微調整するだけでなく、情報の発信源と媒介者に助けられることで、開通しやすくなる。 私の思考・感覚には、〈アンテナ〉の立ちやすい位置や角度、情報を受けとる特定の周波数がある。 ラジオの…

開通―コミュニケーションの封鎖が解かれるまで― 4 文学会でチャンネル開通

それから間もなくして、不思議な出来事が起きた。 私はある文学会で、詩や体験記などの文章を発表していた。 ある日、横光利一の『花園の思想』を朗読した。それは、テキストの文字を目で追うと、映像が鮮やかに浮かび上がる迫真の描写だった。 保険証の一件…

開通―コミュニケーションの封鎖が解かれるまで― 3 少しずつ通じ始めた

それから数日後、近所の歯科クリニックに出かけた。 歯科衛生士から歯の磨き方を教わりながら、ことばを逐一ノートに書きとった。衛生士の舌は素早く回転して、台本がないのによくこんなにしゃべれるなと感心した。母国語であっても、ノート筆記しながらでな…

開通―コミュニケーションの封鎖が解かれるまで― 2 input(入力現象)を阻害している要因

何かがinput(入力現象)を阻害している。 inputが滞るのは、ふだんから絵や文章で表現している自分の内面世界に、独特のoutput回路が回っているのかもしれない。 このoutput回線は、心の地底から渦巻き、上昇し、ある地点を出口にして放出されている。input…

開通―コミュニケーションの封鎖が解かれるまで― 1 話しことばの意味が消えた

「○月×日に診察した分が、資格取得日に入っているかどうか……」 病院の事務員が難しい顔で呟いた。 ○月×日の三週間前、ある事情によって保険証の資格を喪失した。継続して使えるようにしなければならないが、今は手元にない。病院で診察を受けた後、その事情…