マイノリティ・センス

自閉スペクトラム症の個人的な表現・分析(聴覚過敏多め)

スイレン

開通―コミュニケーションの封鎖が解かれるまで― 5まとめ 〈アンテナ〉と〈チューニング〉

 私のinput回路は、チューナー(受信機で同調操作を行う部分)を微調整するだけでなく、情報の発信源と媒介者に助けられることで、開通しやすくなる。

 

 私の思考・感覚には、〈アンテナ〉の立ちやすい位置や角度、情報を受けとる特定の周波数がある。

 

 ラジオのチューニングをするように、〈アンテナ〉を適切な角度で立て、受信しやすい周波に合わせてやれば、世界を解読するチャンネルは開通する。ここでいう〈アンテナ〉とは、興味関心に導かれた触手のような意志であり、〈チューニング〉とは、同調回路を取得する姿勢の微調整のことである。

 

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 以下の条件が、切断されたコミュニケーションを回復した。

 

 第一に、〈アンテナ〉が拾い、解読しようとする対象世界が、私の意識に到達する訴求力をもつこと。話者や筆者の思考や体験に、私のそれと似ている部分があり、「よく分かる」と理解・実感しやすいこと。

 第二に、情報を受けとる〈アンテナ〉の位置・姿勢を同じくする媒介者が、〈アンテナ〉の立つ位置(input通用門)に情報を送り込み、〈チューニング〉意識を刺激すること。

 第三に、〈アンテナ〉を立てて、なんとしてでも情報を取得したいという、対象世界を求める意志があること。対象への興味・感心が強いこと。

 

 おそらく医師のいう「離隔」は、〈アンテナ〉が傾き、ダイヤルの位置合わせもズレていて、受信の姿勢が不安定で揺らいでいるために、情報がまったく入ってこない状態を指しているのではないか。

 発信源の情報を受け止める受容体(レセプター)そのものがなくなったのではない。周波数が合わず、アンテナも適切な位置に立っていないために、同期(シンクロ)できないのである。世界からもたらされる情報も、私が立てているアンテナに対して、あさっての方向から流れてくる。

 つまり、〈チューニング〉が狂っている。そこを合わせてやれば、コミュニケーションは開通するのではないか。

 

 コミュニケーションが封鎖された〈卵の殻〉の天空に、台風の目のようなトンネルができ、そこからチャンネルは開通した。チャンネルは世界の像を心のスクリーンに映し出した。

 

 こうして私は「離隔」から脱し、会話する自分を、voice(音声)によることばを取り戻すことができた。