マイノリティ・センス

自閉スペクトラム症の個人的な表現・分析(聴覚過敏多め)

スイレン

アイデンティティを照らし出す自閉症【詩】

自分を照らし出すもの

 

 

 

カンテラ

 

巌(いわお)が暗がりに沈む

闇黒(あんこく)の洞窟を行く

湿った石灰岩に沿って

奥、奥、そのまた奥深く――

道の尽きた壁に

肉厚に隆起した

透明の膜を着膨れて

沈黙に鎮座する

異形の塊

――それがわたし

 

君よ カンテラに灯をともし

その手に掲げ持て

そうして黒く染まった足下を

明らかに照らし出し

ここまで歩みきておくれ

 

  カンテラを掲げるな

  お前はたちまち

  狙撃されてしまうだろう

 

君は知らないのだ

この照明なしに

洞窟を 闇黒(あんこく)を

寒天の着膨れを

わたしと君を隔絶している白壁を

決して見ないことを……

 

  カンテラを掲げるな

  カンテラはなくとも

  お前はお前でいられる

 

君は知らないのだ

お前とわたしの基軸を駆動している

車輪の型が異なるからくりが

透明の檻を産み出した

はじまりの物語を……

カンテラの照明なしには

晒せない素肌を

永遠に行き交わない言伝を

秘められた仕掛けを

 

君よ カンテラを掲げよ

そうして洞窟を 闇黒を

明らかに照らし出し

ここまで歩みきておくれ

君よ わたしが見えるまで

君よ わたしに至るまで

 

 

 

自分を照らし出すもの

 

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【ひとこと】

絵も、詩のイメージも、どことなく禍々しいですが……。

ありのままの自分を、アイデンティティを照らし出すもの。

……をイメージして、「カンテラ」に代入していただければと思います。

私は「自閉症」をイメージしました。

 「――それがわたし」は要らないかな?

あったらメッセージ性は出るけど、ないと文中の「わたし」が弱まるかな。

また推敲するかもしれません。