人の気持ちがわからない奴はアスペルガーだ!……なわけはない
○○さんってアスペルガーじゃない?
知り合いのY美が、声をひそめて私にこうささやきました。
「Oさんてアスペルガーじゃない?」
Y美はスピリチュアルなものに興味を持つ、繊細で敏感な人です。
HSP(Highly Sensitive Person 人一倍敏感な人)の特性があると、私は感じています。
ある時Oさんは、Y美の繊細な気持ちを汲まない発言をしたそうです。
Y美は、そんなOさんをとがめるために、「アスペルガーじゃない?」と指摘したのです。
こうした声を、私は至るところで聞いてきました。
Y美だけではなく。
「○○さんってアスペルガーじゃない?」
「△△さんてアスペよ」
自閉症より「アスペ」「アスペルガー」を指摘する人が多いようです。
ちなみに自閉症とは、生まれつき
1、対人関係の特異性
2、コミュニケーションの障害
3、想像力の障害
という3つに特徴(3つ組)が現れることから、診断される障害です。
知的障害を伴わない自閉症を、以前はアスペルガー症候群と呼んでいました。
現在は、従来のアスペルガー症候群も古典的自閉症も、自閉スペクトラム症ひとくくりになっているそうです。
アスペルガーの人だけが人の気持ちを理解できないのではない
話を戻すと、Y美がとがめたOさんは、社交的で交友関係が広く、コミュニケーションと言語の能力は高く、想像力も豊かな人です。
対人関係の特異性、コミュニケーションの障害、イマジネーションの障害という「3つ組」がひとつもありません。
しかも鈍感です。
感覚の鈍い自閉症者はいないでしょう。
自閉スペクトラムとは真逆のアイデンティティを持っているのです。
そんな人に、なぜY美が「アスペルガーじゃない?」というのか。
それは、「人の気持ちがわからないのはアスペルガー」というステレオタイプな障害のイメージがあるからでしょう。
つまり偏った見解です。
Y美を怒らせたOさんは、当時、自分が持てる以上のストレスを抱えてパンクしそうでした。
Oさんは、自己の感覚を遮断し麻痺させて、厳しい状況を乗り切ろうとしているように見えました。
もともと鈍感なのに、さらに鈍感になっていました。
鈍感になっていたから、超敏感で繊細なY美の心を理解しない、無神経な発言をしたのでしょう。
だからといって、Oさんがアスペルガー症候群ということにはなりません。
Oさんはただ、一時的に、人の気持ちに鈍感になっていただけです。
人は心の余裕をなくした時、自分をシャットダウンして、相手の気持ちを十分理解できなくなることがあります。
誰しも辛い状況に陥ると、自己を守るために、感覚を切断します。
そんなふうに余裕を失ってしまった相手に何が起こっているのか、目の前の人が見えない人もいます。
OさんとY美はどっちもどっちで、相手が見えていなかったのです。
人の気持ちがわからないのはあなた
「人の気持ちがわからないのはアスペルガーだ。」
そうではなく、アスペルガーだと安易に決めつける方が、相手を十分理解できない、相手が見えない可能性が大きいです。
相手を見、心を観察できる人なら、決めつけなくても、その人がどういう人かわかります。
同じ体験をしている人も、相手を直観的に把握するでしょう。
相手を理解できないから、アスペルガーというラベルを貼ることで、安心する。
なんだかよくわからないものが、「アスペルガー」という記号で解決できる。
つまり、「自分がわからない」という問題を、相手に転嫁しているのです。
相手を理解できないのは、相手の問題ではなく自分の問題です。
もし相手が本当に自閉スペクトラムならば、相手と自分双方の問題ということになります。
ラベルを貼った相手だけに、決して問題があるわけではありません。