マイノリティ・センス

自閉スペクトラム症の個人的な表現・分析(聴覚過敏多め)

スイレン

奪われた者の言葉を、沈黙を強いることで再び抑えつける

暴力を受けた人は、自分の身に何が起きたのか、理解することができなくなる。「自身との関わり方と世界との関わり方という二重の意味」で、その根幹を揺さぶられ、沈黙を余儀なくされる。加害者は、被害者の沈黙を望み、その犯罪の痕跡を消し去ろうとする。

 

暴力によって、沈黙を強いる。沈黙させることで、生きる権利を剥奪する。

 

聞く側が言葉を要求するのではなく、こぼれてくる言葉を拾い集める。そのことで、人間は回復する。沈黙からの言葉が生まれるのをゆっくりと待つ。

 

朝日新聞書評(日付不詳)『なぜならそれは言葉にできるから』に寄せる武田砂鉄の書評「人間的であろうとするために」

 

言葉が出ない。
(どうでもいい言葉は出るけど、肝心なことは、言葉になる前に押さえつけられる)

心の地底にこびりついた言葉が、浮上しない。
長い間、ずっと。
無意識の世界で受けた長年の抑圧。
そのことが私の「人間」を奪う。

 

人間の痕跡を刻もうとすること。
もう一度生きようとする人の言葉を、君は奪うか。
そうすることで、二度暴力を振るっていることを、知らずに。

 

言葉に出すのが怖い。
暴力を振るう者がいるから。
言葉にならぬ者の声を、無理矢理抑えつけようとする者がいるから。
相模原障害者施設殺傷事件の犯人のように。