マイノリティ・センス

自閉スペクトラム症の個人的な表現・分析(聴覚過敏多め)

スイレン

 多人数で集まってワイワイ食事をする難しさ

 みんなで集まってワイワイ食事をする。鉄板プレートのランチをつついて。

ふつうの人にはなんでもないその光景が、私には、サーカスで曲芸をしているような難しさを感じさせました。

苦手な雑談。共感できない話題。時々理解できない話しことば。

自分を操りながら、みんなに「合わせる」曲芸に、全意識を集中して――。

一瞬のバランスに、心の中で、冷や汗を流していたのです。

以下の詩は、その時に詠んだものです。(七、五と韻を踏んでいます。)

 

 

  *  *  *

 

 

【鉄板上のアクロバティック】

 

鉄板踊る食器たち

小皿に溶けたチョコの海

フォークの行く手吸い上げた

さざめく口の揺れ笑い

熱せる鉄の上満ちる

いともたやすき午後の劇

ひとり冷や汗滴りて

見えぬ火の輪の綱渡り

 

鉄板踊る食器たち

小皿のチーズ方々に

フォークの先の味模様

華やぎ声の時交いて

熱せる鉄の上に張る

いともたやすき天幕に

うめく白杖地に鳴らし

人目絶する曲芸師

 

鉄板踊る食器たち

小皿もそろそろ底尽きて

フォークの思いかまびすし

ランチひろげる祭り気の

熱せる鉄の上に舞う

いともたやすき軽業に

危なき仕事乗り切らん

暗がり影の離れ業

 

(2017.3.14 『声・まっくら森』収録)