マイノリティ・センス

自閉スペクトラム症の個人的な表現・分析(聴覚過敏多め)

スイレン

SNS不安 (2)通知にウッ!

 「ツイッターがやりづらい私」のイメージを、ことばと図で描写してみよう。

 

 まず、スマホ画面にあるツイッターのアイコンの右肩に、何かが表示されている。バッジのような赤い丸印の中に、白抜きで数字が見える。これは、いいねされた、リツイートされた、メッセージが来たなどの、主に読者の反応を知らせる「通知」である。数字は、反応の件数を表している。

 

 ウッ……!

 まずここで、胸がつかえる。なぜか。何かが境界線を破って侵入してきたという、抵抗と圧迫を感じるのだ。SNSのアイコンは、ちょうど自己と他者の境界線を象徴する〈扉〉である。〈扉〉の外には外界がある。ここに「通知」の赤丸が表示されると、〈扉〉を突き破って、何者かが自分という部屋の中に押し寄せてくるような感じを抱く。何が押し寄せるかというと、ハートの波が押し寄せる感じがする。それが「ウッ!」とくる。

 

 

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図1 通知が来る!

 

 勝手に開けられた〈扉〉からは、人々の笑い声が聞こえてくる(ような気がする)。いわゆるパーティー、社交の雰囲気だ。入ってこいと言われているような。誰も自分を見ていないのに、誰かに見られているような……。そうした自意識過剰と社交不安をもたらす人々の〈念〉は、だが、自意識の部屋の奥までは立ち入らない。部屋の中には「ここでストップ」という停止線があり、一応それ以上は入ってこない(図1)。私の内部から、〈扉〉の外を見てみたいという、小さなハートが立ち上がる。しかし、押し寄せるハートの濁流にのみ込まれそうになって、立ち上がろうとしていた自分のハートは萎(しお)れる。こうして、ツイッターに入れないことが多々ある。

 

 とはいえ、せっかく自己表現した絵なり文章なりに、反応があるとうれしい。この「通知」は、喜びをもって迎え入れるサインでもあるはず。ところが、「通知」の赤丸はあまりにも「刺激」が強い

 

 なぜ赤い!? 赤くなくてもいいじゃないか。この鮮やかな原色は強烈で、情緒を激しく揺さぶり、気分を不安にさせる。シンプルな丸のかたちも不気味だ。能面のように無表情でありながら、情念が迫ってくる。心の深い部分を引っかき回されるので、ツイッターの「通知」を見ているだけでも、冷や汗をかく思いがする。

 

 私はかねがねSNSの「通知」自体をなくしてもらいたいと思っていた。自他の境界である〈扉〉が開きっぱなしで落ち着かない。〈扉〉は自分で開けて出て行くから、勝手に開けないでほしいと。それで、「通知」をできるだけ必要最小限にするよう設定をいじるのだが、機械音痴でやり方がよくわからず、格闘しているあいだにヘトヘトに疲れてしまう。

 

 せめて赤丸をやめて、黒丸にしてほしい。いっそ葬式の垂れ幕のように、こちらから覗くぞと決意しないかぎり〈扉〉の外が見えないような、情緒にダイレクトに訴えかけない、暗く複雑な「通知」にしてほしい。触らずにはいられない好感をかきたてる、猫の肉球「通知」でもいい。

 できれば、ふだんは透明で、1000分の1秒間ぐらい白く光って、もはや「通知」があるのかないのかわからない「ステルス通知」がよい。「ん? 今何か光った!?」ぐらいの。これぐらい存在感が薄いと、逆に〈扉〉を開けて「見てみよう」という気になるではないか。

(追記:数年ぶりに設定をいじると、「通知」を完全にオフにする方法があるらしいことに、今はじめて気づいた。)