意味の輪っかにつながりたい

私には「意味」と「理解」が欠けている。

だから、欠けた手がかりを強く求めた。

それが、世界と自分をつなぐ通路のように思えた。

自分の外にある世界や人が話している言葉の意味を理解したい。

その気持ちが人一倍強かった。

だから、日本人でありながら日本語から「意味」がしばしば抜け落ちていく現象に、いつも強い恐怖を抱いていた。

 

 

【意味の輪っかの外側で】

 

意味の輪っかに加われず

心は孤独に軋むのか

意味の輪っかを前にして

恐れの砦を築くのか

意味の輪っかの結び目を

ほどいてほしいと願うのか

意味の輪っかの内側で

外を見るのは誰なのか

意味の輪っかの外側で

内を覗くは誰なのか

意味の輪っかに閉ざされば

輪っかの意味は消滅す

意味の輪っかを眺むれば

輪っかは意味を従える

意味の輪っかの現前に

なす術もなく一人在る

（『声・まっくら森』収録）