マイノリティ・センス

自閉スペクトラム症の個人的な表現・分析(聴覚過敏多め)

スイレン

〈定位〉から考える聴覚過敏11 火に油を注ぐもの(2) 音の意味

 「気分」とともに「音の意味」もまた聴覚を過敏にさせる要因になります。「音の意味」がわからなければ「不安な気分」になるし、「不安な気分」が高じれば「音の意味」がますます聞きとれなくなるという悪循環が生じます。こうした不安が音の聞こえ方を変化させ、刺激を増幅させる様子を体感的に表現している映像があります。

 

 「サイレントヒル2」というホラーゲームでは、主人公の潜在意識が具現化された世界が舞台になっており、濃霧や暗闇に包まれて数メートル先が見えない局限された視界で、殺人を犯した罪悪感など主人公の心が生みだした異形の怪物が近づくと、携帯用の小型ラジオのノイズが鳴り出すという演出があります。自分に迫ってくるものの正体がわからない恐怖によって聴覚過敏のノイズが増幅する様子に似ており、印象に残ります。

 

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 原始的な恐怖が神経を興奮させる「気分」よりも、「音の意味」が聞こえに及ぼす影響はもっと複雑で込み入っています。

 聴覚過敏は、音とその意味内容をどういうふうに捉える(レシーブする)か、解釈するか、受容するかという問題であり、体験です。

 「音の意味」が全然わからない条件で音を聞く場合と、よくわかる条件で音を聞く場合とでは、聞こえ方にかなり差が生じます。「音の意味」がわからなければ、不安な「気分」がもたらす現象と同じく、刺激の総量は多くなり、音量は大きくなり、距離は近くなります。しばしば強迫的に受容限度に向かって飽和していき、さらにあふれ出ることもあります。

 

 音の物理レベルに関係しないこの心理的な現象は、「音の意味」を求めようとする認識のうちで起こっています。